為替予想の大家 若林栄四さんの最新刊。
何だかパッとしないタイトルですが、
著者を知っている人なら
本の題名など気にせず買うでしょうから
問題はないですよね。
著者を知らない人のために
まずは簡単にどんな人か紹介してみましょう。
昔、1995年の$=80円を的中させ、
今回は2009年頃だったかに、
「2012年2月に$=74円50銭で円高は終わり」
と予言した人です。
今回、結果的には74円台はつけませんでしたし、
ドル円の最安値は2011年10月の75円53銭でしたが
2012年1月末~2月の76円03銭から
相場は転換して急上昇していきました。
3月にいったん天井を打って
また低迷状態に入りましたが
9月末から急上昇して現在に至ります。
昨日終値は92円70銭なので
76円から計算すると16円70銭ほどの上昇、
率にして約22%の上昇率です。
振り返ってみれば、
やはり2012年2月が”転機”になった
というのは外れてはいない、と言えます。
3~4年前の110円台の頃に予想したのですから
1円は誤差の範囲と言えます。
著者の凄いところは、
「何年何月に何円」と、
日柄と値段の両方を予言することで、
これは他のアナリストにはできないことです。
神様ではないので
予想はたびたび外れますが
精度の凄さは世界一と言えるでしょう。
ところで、
「相場で儲けるには予想を的中させる必要などない」
という人もいます。
その意味は
「動いた方についていくだけだから」
(だから予想する必要がない)
とか、
株なら
「ファンダメンタルズの良い銘柄は上がるものだから」
などという理由でしょう。
が、予想が的中するなら、
その方が儲かるに決まってます。
相場の悪さに引っ張られて
好業績の株が上がらないのはよくあることで
良い銘柄だから上がるはず、だけでは
いつまで経っても儲けが出なかったりします。
伝説のファンドマネジャー
ピーターリンチ氏でさえ、
ポートフォリオの40%は失敗するそうです。
逆に銘柄選択はまずくても
買うタイミングがよければ儲かるのも相場です。
つまり日柄を予想できれば
大儲けできるのは間違いないところです。
また、為替はファンダメンタルズなど
ほとんど関係ない世界なので
長期のポジションを持つなら
予想を的中させないと儲からないでしょう。
チャートを見て短期取引に徹するなら
予想など必要ないかもしれませんが。
さて今回の新刊では予想項目は少なく、
一般投資家には却って良いでしょう。
ドル円、ユーロドル、ユーロ円、
米国株、日本株、日本国債、金
以上の見通しを述べています。
国債先物をやる人は少ないでしょうが
債券取引=金利取引ですから
一般人にも参考になると思います。
また、相場予想だけでなく、
相場の見方・読み方、
相場に対する際の態度や考え方など
重要なことを素人に教えてくれるのも著者の特徴です。
毎年利益を上げる個人投資家でも
納得する内容が多いと思います。
近年の作品では
生い立ちや東京銀行に入社してからの経歴を
面白おかしく書いており
ページ数を稼ぐためかもしれませんが
読み物としても面白くなっています。
この新刊に限らず、
相場をやる人、特にFX取引をやる人は
著者の代表作だけでも読む事をお奨めします。
なお、著者の予想手法はテクニカルですが、
近年、その使い方を少しづつ著作で披露し始めてます。
正直、本で少し齧った程度では
あの手法を使いこなすのは無理でしょうけども。
これは穿った見方としては、
「2013年以降、相場も経済もよくなって
自分の予想も予言も必要とされなくなるかも。
ならば秘法を公表してもいいだろう」
と考えたのか、
それとも
「編み出した手法を使える弟子を育てたい、
そのために広く一般人から候補者を発掘したい」
とか考えたのだろうか、などと下衆な勘ぐりをしてみましたw
なお、1か所だけ誤植を見つけました。(174ページ)
相場の本では数字の誤植は致命的ですが
今回見つけた誤植部分はグラフの目盛の数字で
誰が見ても何の間違いかがわかるので問題ないです。
ただし、誤植があったということ自体が
他の部分でも誤植があるかも、
という疑念を抱かせるので出版社には
細心の注意を持って出版してもらいたいものです。